2012年 02月 26日

1823 渓流本の周辺

白山水系の渓流釣り
著者 柚本寿二
北国新聞社刊
定価 1800円十税
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植野稔・柚本寿二対談

植野
出版おめでとうございます。
オールカラーで読みやすいですね。
石川県の主要渓流釣行記、上手くまとまっています。
2011年度の釣行、天候不順だったので大変だったでしょう。
柚本
そうですね。実際のスタートは雪解けの5月でしたから、天気が良い日を見つけて相棒と日程調整しながら週1回のペースで進めて、禁漁直前の9月末までかかりました。
植野
白山山系における主要渓流の釣行としてまとめたんですか。
2011年、雨ばかり降った釣りシーズンだったようで、遡行は難儀したんですか。
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柚本
能登を除く石川県の主要河川のすべてを対象にしましたので、厳密には白山山系とは呼べない山域もあるかと思います。が、よその府県の人たちにとって、わかりやすい方がいいのではということで、白山山系としました。基本的に、雨の日は取材を中止しました。ですから、雨マークが長く続いたときは、あせりました。
植野
東日本大震災、新潟福島集中豪雨、関東周辺、かなりの被害がありましたが、そちらの渓流被害なかったのですか。
柚本
幸い北陸は被害もなく、渓も大丈夫でした。
植野
震災の影響がなかった、それは白山イワナにとって幸いでした。
釣行記を読みますと、白山イワナは純情ですね。
それにしても白山イワナはよく釣れるね。
関東周辺ではイワナ場荒れがあり、芳しくない釣行に終始します。
柚本
白山イワナは確かに純情です。エサの食い方も実にのんびりしています。渓流釣り人口が少ないこともあり、場荒れすることも少ないようで、平日ならどこに出掛けてもけっこういい釣りができます。
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植野
白山といえば、日本三大霊場,そして山麓の温泉、イワナは東北同様、山を糧とした先人によって滝上にイワナを放流したようですけど、その話は釣行記に書かれています。
それは白山イワナとして定着、居つきイワナは健在、書き手としてイワナを守り育てなくてはなりません。
その辺りはいかがですか。
柚本
地元の愛好家の方で、遡上止め滝の上に下流で釣ったイワナを放流している人たちがいますので、私たちも今回の取材を通じて目星をつけたところに放そうと話し合っています。
植野
イワナ場の定義として、昔ならイワナ魚止が目標だったのですが、今の釣りでは下流イワナ、中流イワナ、源流イワナ、それぞれの釣り場を遡行者が選択、各自が自由に釣りを楽しむしタイルになってきました。
それと釣り場には人間止め、ゴルジュ、廊下、滝があって遡行技術による釣り場があります。
釣り場への無理な突破は避けてほしい。
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柚本
どこにどんな手段を使って入るかは釣り人の自由ですが、石川の渓は危険を冒して奥地にはいらなくても楽しい釣りができますし、泳ぎたくても泳ぐようなところはあまりありません。そこで、人工的手段を使わない範囲での普通のイワナ釣り取材を心がけました。
植野
この本に出てくる高山植物、樹木、山菜、きのこ、それらを同時に楽しんでもらいたい。
竿を置いて、ふと立ち止まれば、そこには白山の自然があります。
イワナだけを求めることなく、白山という山釣りを実施してもらいたいものです。
柚本
私もそう思います。イワナ釣りを通して、山全体を楽しむというのでしょうか。これも押し付けることはできませんが、釣った数や大きさだけが喜びというのは、一定の経験を積んだ人から順番に、卒業してもいいかと思います。
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植野
この本に出てくるイワナ、それは中部山岳地イワナと同じ魚紋である、居つきイワナですね。
読者にも白山イワナ魚紋の旅をやってほしい。
改めて読み返せば、最終的な居つきイワナが成育している渓流、進化途中の渓流、色々あってそれが面白い。
それを大事にしたい。
イワナの立場に立って、無駄な殺生は避けてほしい。
お土産イワナ捕獲行為は絶対やらないでほしい。
イワナという渓魚、それは先人が残した自然遺産であるから、釣り人とて共通の認識を持って行動してもらいたいね。
白山という地域居つきイワナであるから、北の防波堤的役目があるのだから、、、、。
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柚本
大半の釣り好きは、釣ったイワナを持ち帰って家族に自慢したり、知り合いに届けたり、冷蔵庫に保存して自己陶酔していたように思います。ただそれは、ひと時代前の古い世代によく見受けられる「オカズ釣り」パターンのように思います。若い人たちの間では今、何かが変わってきているように見えます。リリースは当たり前という常識の広がりも見られます。これはこれでまた、不自然な気がするのは、歳のせいでしょうか。キャッチもリリースも、「ほどほどに」ぐらいで、ちょうどいいのではないでしょうか。これがけっこう難しいことではありますが。
植野
渓流釣り本が出版されれば、多少の遭難事故が生ずる。
かつて私が書いた渓流本を手引きに入山遭難死亡事故がありました。
私のルート図コピーがあって、やはり道義的責任を感じて複雑な心境になった覚えがあります。
白山釣行において、こんな事故のないように注意してほしい。
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柚本
確かに、植野さんの本の遡行図は、山岳会の報告書に載せる記録と同じものでした。コピーして持って行けば、どこをどう巻けば良いとか、どこはザイルが必要とかがわかるものでした。白山山系の渓流釣りでは、遡行図は概念のみとし、主観によって変わる滝の高さとか、力量によって違う巻き方は省略しました。巻くか泳ぐかヘツるかは、それぞれが考えて決めれば良い事だと思ったからです。山の基本は「自己責任で」ですし、他人のルートをなぞるより、その方が充実するのも事実だと思いますので。
植野
柚本さんといえば白山登山において活躍していますね。
「白山山系とっとおきの山33山」「越前・若狭魅力の日帰り40山」があり、今回、渓流釣り本を出版。
山があって渓流がある。
この両者がここの完成、やはり地元の要請があったのですか。
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柚本
山歩きの本は、たまたま要請されて引き受けました。その当時から、渓流釣りの本が出したいという話しもありました。渓流釣りについては、植野さんに同行させていただいた時期がありましたから、知っているといえばよく知っているわけですが、奥の深さを教えられただけに「知らない」世界でもありました。今回の要請を引き受けたのは、技術はあるけど野心だけの心無い釣り人が、心無い本を出すことを避けたかったからです。それでも、この本を出すに当たっては、うしろめたさがつきまといました。
植野
今年の積雪、北陸ではいかがですか。
例年の倍ありそうですね。
イワナ釣行は多少遅れそうですか。
柚本
石川の場合は、雪は例年より少なめです。手取川流域の白峰で言えば、昨年の半分ほどですから、里近くで4月から、白峰あたりでも5月から釣りになるかと思います。
植野
最後になりましたが、白山の渓流釣り賛歌ができて、私の生活軍資金となり非常に助かりました。
改めて御礼申し上げます。
白山釣行各位様には無事帰還を願っております。
対談ありがとうございます。
今後のご活躍を期待しております。
柚本
私の方こそ、無理を言って「釣り方」のページをお願いして恐縮しております。編集部の方々も、ボリュームある内容に驚いておりました。なによりお礼申し上げます。私の場合、成り行きに逆らう力はありませんので、これからも普段着のままで、できる範囲でやって行くつもりです。今後ともよろしくお願いします。

対談お疲れ様でした。

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柚本寿二 プロフィール
1948年香川県生まれ。30代に入って仕事関係で偶然植野稔さんと出会い、イワナ釣り、沢登りを始める。その後、山岳会に加わって、冬山や岩登りなどをして道草をくう。18年前に石川に移り住み、これも偶然、北國新聞社出版局より山歩きの取材依頼を受け現在に至る。小松市在住63歳
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掲載写真
柚本氏の了解の下。本誌からの写真を使用しました。
対談あとがき
今回の対談、メール交換での内容となる。
久しぶりで有意義なイワナ話ができたものと自負しております。
採集投稿まで6時間かかってしまい、変則的投稿と相成った次第です。
ご了解ください。
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by yuyugaku-ueno | 2012-02-26 16:00 | 身辺雑記


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